IBMによるPC事業売却

先週、アメリカIBMが中国のPCメーカーであるLenovo(聯想集団)にPC事業を売却することを発表しました。

この件について、JMMUFJ総研の山崎元さんが、中で働いている人間にとって、この買収劇が何を意味するかについて解説しています。


 さて、今後、Lenovoが買収したIBMのPC事業をどのように経営するかは分かりませんが、IBMでPC部門に居た社員は、いきなりボスが変わることになります。たとえばThinkPadと呼ばれるIBMのノートパソコンの開発部隊の主力は日本に居たと記憶していますが、彼らにとっての働き心地は今後大きく変化する可能性があります。

 LenovoがIBMのPC部門の有能な社員を全て手に入れることが出来るかどうかは分かりません。事業部門ごとまとめて買われたとはいっても、個々の社員は、Lenovoの経営が気に入らなければ去ることが出来ます。同時に、IBMのPC部門の社員全てを今の条件でLenovoが必要とするかどうかも不確実です。

 企業で働く一社員の立場で考えると、会社全体も、自分が属する事業部門も、個人としての自分自身も売り買いされる商品であるという認識が必要だということが今回の事例で分かります。IBMのPC部門の社員にとって、今回は、自分で転職しなくても集団で強制的に転職させられたようなものです。その場にいる人間集団の意思が尊重されるというよりも、資本を動かす人間の意思決定に従って人が動くという意味で、「資本主義」の貫徹であるともいえます。

 自分の仕事を有利に売れる先はどこか、自分の仕事が有利に売れるようにするには何が必要か、自分の仕事が有利に売れるタイミングはいつか、といったことを全ての個人が考えなければいけない時代になったということではないでしょうか。人生設計にも「マーケット感覚」が必要です。

山崎さん自身、何度も転職し、また山一の廃業も経験しているから、この自分自身の人生設計に関する「マーケット感覚」の必要性を十二分に味わっている人だから、こういう視点がもてるのかと思います。自分自身の人生、考えますね。いろいろな勝負所がまだまだあることでしょう。