教皇の真意??


 以下、Stratfor研究所のレポート(有料購読なので、以下読めませんが)、Geopolitical Intelligence Report: "Faith, Reason and Politics: Parsing the Pope's Remarks" by George Friedman,(2006-09-19 19:39:00)で、教皇によるイスラムへの批判発言に関する仮説に基づく、一つの分析が書かれています。
 かいつまんで話すと、

 まず、この文章は十分練られて作られたものであり、教皇もそのスタッフも、これによってムスリムがどう反応するかについて幻想はもっていなかった、つまりこの反発は十分予想していたはず。しかも教皇は、これは引用であり自分の考えではない、という「出口」も用意していた。結果、ムスリムからの反発は激しく、それに対抗したカトリックからの怒りも起きる。バチカンは非常に有能な情報機関を変わらずもっていて、教皇は中東での戦争が今後どうなっていくかを知っており、教皇の声明はブッシュ政権を、少なくとも間接的に政治的援護射撃をすることになった。一方欧州では、その政治的ダイナミズムを教皇は理解しつつ、この声明によって欧州における教会の地位は強化されることになる。この声明によって、欧州に住むムスリムは、寛容にも限界があるということを知らされることとなる。


 問題は、どこまで教皇がこの方向性を続けるかだ。前教皇ソビエトが崩壊するまで続け、その後米国の物質主義や外交政策にも介入した。教皇イスラム過激派に対抗するよう教会の軸足を持って行く決断をしたのかも知れない。ムスリム教皇の声明(イスラムキリスト教は異なり、キリスト教は理性と結びついているという)を否定するのであれば、彼らは今度はイスラムが理性と結びついていることを認めなければならない。つまり、ムスリムも理性と結びついているということを示すことによって、イスラム過激派の手からその宗教をすくい上げるという重荷を彼らに背負わせたことになる。

というような解説です。フリードマンは、今回の声明を「学識的政治的観点から見てエレガントな動き」と評しています。「今後教皇は、イスラム指導者たちに、ムスリムによる反カトリック声明について同様の処置を求めることを課したり、イスラムとの対話の中で暗示する形でイスラムへの批判を拡大させることができる」とも述べています。


さて、こうした解説通り、教皇の発言はこのような意図があったとして、その思惑通り世界は動いてくれるか、注目に値します。
こんなのは、すべては憶測の域を出ない論説だ、と批判することはできるでしょうが、果たして学者教皇ベネディクト16世が、思いつきであんなことをしゃべるかどうか? 口が滑った、のではなく、あくまで何らかの意図を持って事前に練られた文章である、という前提に立つのが、情勢分析としては分があると思いませんか。