中国でのアジアカップを見ていて(思いの外長くなりました)

わたしも子どものころからサッカーを見ていた一人ですが、中国でのアジアカップ、皆さんどう見ているでしょうね?


村上龍がやっているメールマガジンで、香港在住、フリーランスライターのふるまいよしこさんが、大陸の風‐現地メディアに見る中国社会』を書いていて、昨日来たメールは、第25回「日本vs中国」についてでした。(多分、今日1日だけ読める)


彼女によると、予選リーグの開催地の振り分けは、


「・・・・地理的に韓国に近く、国交回復後も韓国との往来が盛んな済南に韓国チームを、そして現在中国政府が開発に力を入れている西南部の玄関口、重慶市に日本チーム、ついでに西部地域、さらにはもっともっと西域の地域からの石油受け入れ窓口を目指す成都にサウジチーム、もちろん、中国国内で最大の関心を集める中国チームは北京に、という采配・・・・」
だったのではないか、というのです。しかし、重慶反日ムードが高まったことで政府の意図とは逆効果になっただろうということです。つまり「あんな反日感情が高いと、日本から経済進出なんてできないなぁ」と日本政府や企業が思ってしまう・・・ということですね。


(・・・一方でスポーツナビ「日々是亜洲杯2004 喧騒と静寂の北京にて(8月4日@北京、晴れ)」で宇都宮徹壱さんは、サッカー競技としての運営の問題の視点で、この件をまじめに論じています・・・)


ブーイング自体についても、

「・・・・アジア杯での日本チームやサポーターに対するブーイングはただの「うっぷん晴らし」でしかなく、大して日本人が心に傷を負うようなものではない。逆にそのようなサッカーファンたちの行為を許した中国の主催者側に、日本政府は毅然と筋を立てて抗議すべきだろう・・・・」
と書いています。つまり、政府からの情報が依然として非常にコントロールされている中国では、口コミ情報が盛んでそれに感情的に付和雷同しやすい、今回のブーイングもその一端、と見ているようです。実際、中国全国的にこのアジアカップはほとんど注目されておらず、重慶でもスタジアム以外では多くの人は日本人が来てサッカーをしていることは知られていない、というような報告もありますね。


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さて、私個人としては、今回の中国人の反応を見ていると、昔、フィリピン人や韓国人の友人ができたときに、最初はとても礼儀正しく外交的で、ある程度親交が深まったときに、「実は自分の父親は日本軍に殺され・・・」とか「自分は弁護士になるために勉強していたのだけれど、日本軍が侵攻してきて・・・」という話をしてくれたことを思い出します。そうして私たちは歴史を学んできたし、そうして苦しんだ(でいる)人たちがすぐ隣にいることも知り、でもそうした本音を話し合って、ほんとに友だちになれる体験をしてきたように思います。多分、彼らもそれを生きている日本人に伝えることで、何か新しいステップにはいることができたのかもしれません。教会の海外系の人たちはこれはシェアできる体験でないかと思います。


もう一つ思うのは、私は韓国には97年に初めて行ったのですが、「先輩」日本人たちから聞いていたよりもずっと日本人に友好的で驚いた、というのが率直な印象でした。ちょうど経済危機でIMFが入り苦しい時期でしたが、経済的にも一定の成功を収めた後で、国としての「自信」がすでに確固としてあるから、隣国日本とも余裕をもった交流ができるようにずいぶんかわったのではないかと思います。(もちろん、それはあちらの問題で、日本人はもっと歴史を学んでおく必要は依然としてあると思いますが)その後、あの02年のW杯が来るわけで、おそらく、ソウルオリンピック前にこんな友好ムードなど、まったく想像もつかなかったのではないかと思います。


翻って中国を見てみると、まさにそのオリンピック前。近代化が軌道に乗ってきたところで、あいつらには負けないぞ!というムードがあるのではないでしょうかね? もしそうならば、あのブーイングも仕方ないし、間もなくそれも変わっていくのではないかと思います。もしこれが重慶ではなく上海だったらあそこまでのブーイングはなかったかもしれないし。実際、重慶の人たちは、経済的に成功している沿岸部の人たちへの不満も多いらしく、その憂さ晴らし、の意味もあったかもしません。この“カタルシス”、いろんな問題を見るときに、無視できない要素だと、私はいつも思うんです。