NHKチーフ・プロの覚悟に思う

quelo42005-01-15

NHK特番:自民・安倍幹事長代理らが放送直前に介入?(毎日新聞)あたりに、事件のあらましがあります。

(2005年01月13日(木))NHK「政治介入」で変更指示…プロデューサーが会見(読売新聞)

NHK番組改変問題 「会長了承していた」と告発者会見(朝日新聞)

このあたりに、当時、この民衆法廷番組の制作デスクだった、長井暁チーフ・プロデューサーの会見が載っています。読売も、バランスをとって、東京地裁NHKに番組変更は正当な編集行為だった旨の判決をしたことを書いていますが、同じジャーナリストとしてでしょうか、この会見自体はコメント抜きできっちり伝えています。


この人、すごいですね。大組織の人がここまでやるというのは、よほど押さえきれない状況下でのことと思います。同い年なんで、会見を見た感じも、闘う社会派では決してなく、優しさの世代の人みたいですよね。それがここまで決断するにはどれほどのプレッシャーがあったことか、と思います。


私は業界紙ですので、こんなにのるかそるかは絶対ないのですが、伝える仕事をしている端くれとして、この内部告発には戦慄を覚え、ここまで追い込まれる状況なのかと思うと、大手マスコミの状況はひどいのだと思います。権力を全然批判できないマスコミを持つ社会ではどんどん権力は抑圧的になります。少なくとも、NHKの問題で、日放労が告発者支援へ 声明発表というふうに、NHKの労組はこの長井氏を守る決意を示したことはよかった。


赤旗は、マスメディア時評:抑圧側に身を置く「読売」「産経」というふうに、この件に関する一連の報道を下のように分析しています。


被害者と加害者取り違える
 各新聞の社説でも、この問題をいち早く報じた「朝日」が十三日付で「NHK 政治家への抵抗力を持て」と主張したのをはじめ、「日経」(十四日付)が「公共放送の独立性を貫け」、「毎日」(十五日付)が「政治に弱い体質が問題だ」と、あいついで取り上げているのは当然でしょう。
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 ところが「読売」は十五日付社説で「不可解な『制作現場の自由』論」と、番組を制作した側に矛先を向け、「産経」に至っては同日付で「NHK慰安婦番組 内容自体も検証すべきだ」と主張したうえ、一面トップで番組の内容を非難する記事を載せています。
各社問題にしているのは事前検閲という、憲法違反であり、言論の自由がなくなり、政府や政治家を批判できないような政治状況は独裁的で看過できないことを指摘しているのであり、NHKの番組自体の妥当性を論じているわけではないのです。さらにこの赤旗の指摘を「アカ」呼ばわりして無視するような社会になったら、ほんとに言論の自由がなくなる怖い社会です。


政治家は権力を持ってるわけですから、自分の都合の悪いことや気にくわないことは、腕力を使って黙らせようとするのがあたりまで、それを社会が受け入れてしまうことが恐ろしい。マスコミがどんどん自己規制していくような社会は恐ろしい。軍隊の何が恐ろしいかというと、そうした政治家の意を受けて、彼らにとって都合の悪い自国民に銃を向けるのが怖いのです。この怖さが分からない人は「平和ボケ」です。軍事政権を経験した私は、そう思います。