北野一氏、労組的本来正義の図

quelo42005-02-21

いやぁ、とてもいい話です。JMM、2005年2月21日、No.311 Monday Editionからの、引用ですが、今日しか読めないので、主なところを抜粋します。(写真はヌーの群れ)


村上龍編集長の「春闘ですが、完全に死語になった気がします。日本の労働組合に未来はあるのでしょうか」という質問に対する、三菱証券の北野一さんの答えからですが、小倉寛太郎さんの『自然に生きて』(新日本出版社)という本にある話が引用されています。


『自然に生きて』は、その小倉さんの講演録ですが、バッファローとヌーの話は面白かった。同じ草食獣にも拘らず、肉食獣への対応が違うのだそうです。バッファローは群れを作ります。ライオンは、挑発して、その中の一頭を群れから孤立させます。その時、バッファローの群れが引き返してライオンに逆襲することがあります。さすがに衆寡敵せずライオンも逃げ出します。すると、バッファローは、命拾いをした仲間を助け、その傷を舐めてやって安全なところに移動するそうです。


 一方、ヌーも群れをつくります。今度はチーターがヌーの群れを狙います。ヌーの群れは混乱し、逃げ惑うだけで、結局、チーターに捕らえられ、食べられてしまいます。その時、他のヌーは、「あーよかった。今日はオレの番じゃなかった」と言わんばかりに、また草を食べ始めるそうです。小倉さんは、「ヌーは団結したときの自分の強さを知らない。・・・人間はバッファローに学ぶべきだ。団結すれば強くなるということに、もっともっと自信を持つ必要がある」と言います。
この対比、すごいでしょ。確かに今の労働環境について、ぴったり当てはまるように見えますし、成熟した近代の現代日本社会にとって、いわゆる「勝ち組」「負け組」が固定化し、その格差が拡大し続けるなかで、損をしてでも団結する、って人はますますいなく、自分だけでも勝ち残り、「あーよかった。今日はオレの番じゃなかった」と、言い放つ人ばかり(自分も含めてですよ、)になっちゃうのかもしれませんねぇ。このことを、北野氏はさらにマクロで検証しています。

「今日は、オレの番じゃなかった」と草を食むヌー。我々、日本人も同じかもしれません。日本の失業率の推移を見てみましょう。1970年代に1.7%であった失業率は、2000年代には5.0%まで上昇します。年齢別をみると、30- 34歳の失業率は、この間、1.9%から5.3%まで上昇しておりました。一方、20- 24歳の失業率は、2.7%から9.1%まで大幅に上昇しました。各個人がばらばらの若年層は、群れからはぐれた子供のヌーだったのではないでしょうか。
耳が痛いですね。50代はもちろん“やり逃げ”中なんですが、僕ら40代も、口ではきれいなこと言ってても、結局自分の収入やらjob securityは守りますから、結果的にその割を食って20代が職にあぶれているのは現実ですね。「あーよかった。今日はオレの番じゃなかった」と思ってるヌーになってますね。


そういう、日本社会、というマクロもなかなか問題ですが、各宗教教団や、NGOなんかも、「『今日は、オレの番じゃなかった』ではなく、『余計なこと』をどれだけ出来るかに掛かっているように思います」(北野氏)、と思います。教団なんかでも、ほんとは「みんなの救い」、もっと言えば、「弱くなっている人の救い」をめざしていかなければならないはずが、「自分の救い」ばかりに気持ちが行っている感、なきにしもあらずです。もっと「優しい空間」であるはずなのですが。
日本全体としても、弱肉強食を乗り越える資本主義の成熟に、日本は達することができるでしょうか。いや、北野氏の切れ味鋭い指摘、恐れ入ります。