勝手に増資する人たち

quelo42005-02-28

私は元もとは金融関係ですので、ニッポン放送に向けたフジからの第三者割当増資についてはどう考えても許せない!、やっぱり書いておきます。


ライブドア堀江社長についてのバッシングやら、トヨタ奥田会長がちょっと諫めたり、日テレの氏家会長が肩を持ったり、いろいろありますが、株式会社である以上、今回のような買収は可能性があったわけで、それに対するワキが甘かったとしか言いようがない。これに対して、ライブドアを不道徳、といった非難をすることは、まったくもってナンセンス。ともかく、こうした株式市場で当然起こりうる売買を嫌うのなら、ニッポン放送は自社株を買い戻して、株式の非公開化を進めるしかなかったわけです。


ところで、今回のように敵対的な買収がすでに始まっている段階で、特定株主に対する第三者割当増資がOKなら(だいたいこんなもの後出しじゃんけんみたいなものなので)、これ以外のあらゆる敵対的買収に対する防衛策なんて採る必要ないわけで、どんな少数株主であっても、そこを現経営陣が「友軍」と見なすなら、そこだけに増資して保有株数を増やしてもらえば、経営陣は安定になる。今回の増資が認められれば、会社の価値が増えずに株数だけが増えるので、一株あたりの価値は下がるわけで、実際に株価が軟化する可能性は高く、村上ファンドだって、評価損で大損こく危険性もかなり高いのです。


JMMでも、このポイントについて、楽天証券山崎元さんは以下のように書いています(ちょっと長いですが、2005年2月28日発行 JMM [Japan Mail Media] No.312 Monday Editionより)。


 さて、22日にフジテレビジョン及びニッポン放送から、ライブドアに対する対抗策が発表されました。これは、フジテレビに対する新株引き受け権の付与と、ニッポン放送保有するフジテレビジョン株式の貸株(大和証券SMBCに対する)でしたが、前者はニッポン放送に対してライブドアが議決権の過半数を取れないようにできる条件であり、後者は、万一ライブドアニッポン放送支配下に置いた場合でも、フジテレビジョンに対して議決権行使できないようにする条件です。これに対して、ライブドアは、東京地裁に差し止め請求を行うとのことなので、両者の争いは法廷に持ち込まれることになりそうです。また、どちらの条件も(特に後者の条件は)ニッポン放送の株式の価値を引き下げる方向に働くので、ニッポン放送の一般株主にとって問題があるというべきかも知れません。


 法律判断は微妙ですが、後から特定の株主の権利を弱めるフジテレビジョンニッポン放送側の対抗策が認められるとすると、株主の権利が曖昧になり、今後他のケースにも悪い影響を与えそうです。


 ニッポン放送フジサンケイグループを離れると企業価値が低下するといった理由がニッポン放送側から説明されていますが、仮にフジサンケイグループがそのように行動するとすれば、商業倫理的にも些か問題でしょうし(どうしてフジサンケイグループニッポン放送を困らせる必要があるのかさっぱり分かりません)、それはニッポン放送企業価値の下落を通じてフジテレビジョンニッポン放送の大株主です)の企業価値を毀損します。ニッポン放送経営陣の主張には無理があるように思えますが(これはニッポン放送経営陣の決定であり、フジテレビジョンの経営者が「(差し止め請求を)受けて立つ」とコメントしたのは些か奇妙でした)今後の他のケースにも影響するので、裁判所の判断が注目されます。


 仮に、ニッポン放送の主張が通ったとすると、たとえば、外国人に「日本では、株式を買っても議決権はついていないのか?」とでも訊かれたら、返答に窮してしまいそうです。
最後の、「株式を買っても議決権はついていない」というのが皮肉と言えば皮肉なんですが、今回の第三者割当が認められれば、つまりは、こういうこと、となるわけです。高い金払ってリスクをとって株式を手に入れても、会社は株主に関係なく、経営陣の思い通り。これって株式会社制度を根本から揺るがす事実です。株式会社の社長は本来、雇われマダムなはずですけど。日本の「資本主義」はいったいどこへ行ってしまうのやら。