ブログやネットで活動するジャーナリスト

「アップルの対ブロガー裁判と言論の自由 Declan McCullagh (CNET News.com) 2005/03/09 10:32」という記事は、アメリカではかなり主流になりつつある、ブログやウェブサイトを通じてニュースを流す記者たちの、比較的弱い立場を明示することで、主流マスコミとマイナーマスコミの間にある、力と権力の大きな溝を浮き彫りにするものです。
(韓国でもネットメディアは相当進んでる話「韓国、新聞とネット事情」、以前に書きました)


 情報源の身元を力ずくで明らかにしようとするApple Computerの試みは、ブロガーやネットで活動するジャーナリストなどはしょせん劣った人種であるとの偏見を明らかに示すものだ。
 従来のメディアの記者と、Apple関連の3つのニュースサイト--Think Secret、Apple Insider、 PowerPageの運営者らとの間には、ニュース収集テクニックの点で大きな違いは存在しない。しかし、両者を隔てる法的な溝はとても深い。情報源の保護について定めたカリフォルニア州法は放送メディアや「定期刊行物」にしか適用されず、ウェブは対象に含まれていない。
AppleMacminiだったか、iMacG5だったかの情報をリークした(発表前に漏らした)上の3つのニュースサイトを相手取って、それを漏らした(おそらく)内部者を教えるように強制する訴訟を起こしています。このとき、ジャーナリズムとして認められれば、情報ソースを明かさなくてよいことが法的にも保証されるわけです。ニクソンを辞任に追い込んだウォーターゲート事件の以下の話がそれをよく表しています。

 ウォーターゲート事件を追跡していたWashington Postの記者Bob WoodwardとCarl Bernsteinは情報源を保護できたからこそ、同紙にあの有名な記事を連載することができた。その記事が引き金となり、Richard Nixon大統領は失脚へと追い込まれた。当時、大統領再選をねらっていたNixon側は、WoodwardとBernsteinを相手に裁判を起こし、情報源を明らかにさせようとした。
 それでも、情報源は明らかにならなかった。1973年3月に、連邦地裁判事のCharles Richeyは次のような判決文を著している。「当法廷は、これらの召喚状を発行することにより、メディアやひいては一般への情報の流れが『冷却効果』の影響を受ける可能性を黙認できない。
 Apple Computerは、Richard Nixonでも勝てなかった議論に勝とうとしている。同社は米国時間4日にカリフォルニアの法廷で自説を展開し、3つのニュースサイトに対して情報源を明らかにすることを求めるよう判事を説得してしまったようだ。
つまり、「2級メディア」としてインターネット記者たちが取り扱われる限り、「1級メディア」のテレビ・新聞記者たちに保証されるジャーナリストとしての権利と安全が保証されないわけです。

本文では、「オンライン」メディアと「オフライン」メディアと区別していますが、両メディアは現実の活動上、かなり同じような所にすでにあって、しかしオンラインメディアの多くは個人や小組織でやっているため、たとえば、ホワイトハウスに入る記者証を手に入れることがほとんど不可能だったりという制約を受けているわけです。それに加えて、こうした情報ソースの秘匿の権利がないとなると、これは取材上著しく深刻な状況となります。危険な情報提供を受けるほど、この秘匿の権利がないと、情報提供者はその危険を冒せなくなるからです。


今回のAppleの訴訟のような交渉の中で、次第にオンラインメディアの価値が法的にも認識され、メディアとして同等の権利を認められるように早くなるといいと思います。


さて、日本では、こうした情報秘匿の権利自体あるのでしょうかね?? 前に書いた読売の倫理綱領「読売信条」の中では、徳目としては盛り込まれていますが、これが法律上認められるのかどうか? それに、大手メディアの「権力」に対し、オンラインメディアはどこまでその対抗力となるでしょうか? でも負けずにやりたいですね。私たちのような弱小業界紙にいると、「記者クラブの壁」にあたることはときどきあるんです。