イラクで不明の斎藤氏



同じJMMに、編集長、村上龍イラクで行方不明になっている斎藤氏について、マスコミの役割に関して次のように書いています。

民間軍事会社勤務の斉藤昭彦さんがイラクで銃撃を受けた事件では、政府はほとんど現地で情報を得ていないように見受けられます。以前外務省職員が銃撃を受け殺害された際には、現場の映像が繰り返し映し出されました。あのときは事件後に襲撃の現場をカメラがとらえていました。今回の事件は、斉藤氏が元傭兵で民間軍事会社の社員だったという側面が強調され、現場の映像はほとんど入ってきません。

 
 これは「推測」ですが、斉藤氏が襲撃された現場は、日本のメディアはもちろんのこと、現地の警察も、ひょっとしたらアメリカ軍でさえも、「立ち入るのに多大なリスクを伴う危険区域」なのではないでしょうか。アメリカ軍が嫌がる危険区域だから、民間の軍事会社にオペレーションの依頼があったのだろうという見方もできます。だいいち襲撃地点そのものがはっきりとしません。わかっているのは、バグダッド近郊の米軍基地を出てスンニトライアングルの西端にあるヒートという町へ向かう道路上、ということだけです。


 以前にもこのエッセイに書きましたが、日本の大手既成メディアは、まず斉藤氏が襲撃された現場にはカメラが入れないことを、わたしたちに率直に伝えるべきだと思います。メディアのカメラも、現地の警察も、ひょっとしたらアメリカ軍でさえも立ち入れないような危険な区域が事件現場なのだとすると、日本政府はどうやって斉藤氏の消息を探り、救出するための情報を収拾するつもりなのでしょうか。また、なぜ日本のメディアはそういったことを外務省に確かめようとしないのでしょう。

もちろん、上の話の大部分は推測をもとにしたものですが、かなり以前から、バグダッドにはNHK以外の日本大手メディアは不在で、NHKも宿舎からほとんど外に出られない、というメディアの人の話がこのJMMで紹介されていました。おそらくいまでも状況は変わっていないか、NHKすら撤退(アンマンなどに)しているかもしれません。特にテレビで、画面に映っているものだけが真実なのだという錯覚に陥りますが、どうしてその映像で、他のものではないのか、背景を説明する誠実さが必要なときもあると思います。そうでないと、素人をマニピュレートするのは、赤子の手をひねるような・・・、といわれてしまいそうです。


そういえば、5月初旬の、日中戦争の何かの記念日に、今日は北京でも上海でも、半日でもはまったく見られなかった、というニュースを流す時に、フジテレビだけは、バックに前回の時のビンを投げたり看板壊したりする映像を流し続けていました。まったく、赤子の手をひねるのは・・・