ものの見方

quelo42006-09-22



少々ひねくれていると言えなくもないけれど、人と違う視点で見ることが、やはりモノを書いている人間にとって必要なことではないかと思います。そうしたお題を2つ。


1つは、経済評論家の森永氏の話。
森永 卓郎(もりなが・たくろう)氏/経済アナリスト「第48回 ポスト安倍は“小泉”という可能性」(nikkeibp, 9月11日公開)
 これ、阿倍政権はどのみち短命で終わり、その後、期待の後の大きな落胆を持った国民から熱狂的な再登板の声を受けて、しぶしぶ登場する小泉政権の方がはるかに恐ろしい!という話。確かに、阿倍氏への期待は大きいものの、話し方などみていると昔の自民党の政治家たちをまざまざと思い出させるむにゃむにゃ感が充満してませんか? それを打ち破って、ワンセンテンスで、パシンパシン切って捨てた小泉さんが絶大なる人気を博し、その人気絶頂ぶりから党内で何をやろうが、誰も反対できなくなってしまった。この人気がさらに彼に集中してしまうのは、本当に熱狂的にWWI後の疲弊したドイツに受け入れられた国家社会主義ドイツ労働者党のようになるのではないかと、ほんとに心配。下の、植草さんをほんとに陥れたとしたら、そして郵政の時のように反対者を政治的にまったく抹殺してしまうほどの粛正をしても何とも思わない人が、再度権力を握るとき、ほんとに戦前の再来のようにならないでしょうか。


2つめは、アメリカからみた朝鮮半島問題。
村上博美(ワシントンDC在住)From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.44「盧大統領訪米と北朝鮮JMM No.393 Extra Edition3、から。
 韓国の廬大統領の訪米について、ブッシュ政権が冷たい対応をしていることが前段で解説されている上で、朝鮮半島問題へのブッシュ政権の対応を批判している。(いつものようにネットでみられないため、少々詳しく引用)

 北朝鮮が望んでいるのは、根本的な米朝関係の改善である。米国が北朝鮮に対して敵対視を続ける限り、自衛のための抑止力としてミサイルや核を開発するのであり、北朝鮮はどこからも自国が攻撃されないと確信するまで核を放棄しないだろう。2年前ウラン濃縮プログラムの存在を自ら米国担当者に申告したが、それでも米国は北朝鮮の望む2国間直接交渉のテーブルにはつかなかった。やっと重い腰をあげた米国も6カ国協議や多国籍間という枠組みでしか北朝鮮問題には関与しないとの方針をとっている。このままでは、残り2年を残すブッシュ政権では直接交渉は実現せず、米国主導による北朝鮮問題の解決は程遠い。


 米国内の朝鮮半島問題専門家は直接交渉を行おうとしないブッシュ政権に批判的だ。しかもこれまで約束を反故にしてきたのは米国側であり、クリントン政権の1994年の枠組み合意を共和党の強硬派は「宥和だ」と断罪し、合意した内容の履行を遅らせあるいは放棄したと非難する。L.シーガル氏は北朝鮮が米国から攻撃されないと約束しそれを証明することは重要であり、必要なのは米国を交渉のテーブルにつかせ交渉を再開させることだという。しかし、今のブッシュ政権にはチェイニー副大統領を中心としたグループが実権を握り直接交渉に応じる姿勢はない。彼らは「悪(Evil)とは交渉しない」と明言してはばからない。なんとかして米朝直接交渉を実現するために、同盟関係を結ぶ韓国と日本が協力して米国を引っ張り出すべき時ではないかと説く。早ければ早いほど北朝鮮の核開発やミサイル開発を止めることができるからだ。

 日本のマスコミでは、「弱腰外交」として韓国の太陽政策を批判したり、それに逆らってブッシュ政権との蜜月を続けた小泉氏への支持の声がある一方、このように、米国内から、しかも必ずしもリベラルからだけでもない批判が、北朝鮮問題に関してはあるという。ちなみに村上氏のシンクタンクはどちらかといえば共和党よりで、決してリベラルではない印象。
 返す刀で、日本の政策が無謀で無策であることが批判されている。ここが、独特の見方。

 日本も金融制裁に踏み切ったが、実は北朝鮮の態度を変えさせるには、現在行われている経済制裁や口座凍結の逆、つまり北朝鮮との通常貿易を増やすことが必要だと専門家の間では認識されている。友好もしくは不可侵条約を結べば敵から攻撃される脅威は減り北朝鮮はミサイルや核を開発する必要がなくなる。北朝鮮を世界経済の中に組み込み、北朝鮮の経済を向上させることで闇市場へのウランやプルトニウムの拡散も押さえられる。貿易通常化によって北朝鮮を地域的脅威から変換させることができると考えられている。この点では韓国や中国も根本的には共通した認識をもっている。更に中国が恐れているのは、ミサイル防衛計画の前倒しや防衛力強化を進め、しかも先制攻撃の議論まで飛び出した日本の今後である。以前ある日本政府高官が「何かあったときには、米国に北朝鮮をたたいてもらう」と発言したのを聞いたことがあるが、国境から程近いところに首都ソウルを抱える韓国や中国の反対で米国が北朝鮮を攻撃することはほとんど不可能である。


 北朝鮮の周辺国が抱えるリスクは、核開発が進められている状態で金正日が死亡した場合に軍部が権力を握ることだ。そうなってしまえば、地域周辺は不安定で非常に危険な状態になる。日本では安倍新政権が発足するが、米国が直接交渉を行う意思がない以上、日本国内受けを狙う強硬策よりも地域安全保障上の脅威である北朝鮮の核・ミサイル開発問題に、現実的な観点から日本政府が独自に取り組む意思があるかどうかが試されるだろう。

 この最後のくだり、重要でしょ。核ミサイルを数発持ったヘッドレスの軍人国家がすぐ隣にいるリスク。これを避けるために、中韓と協力することが「周辺国」日本の安全保障上、著しく重要じゃないでしょうか。と、米保守系シンクタンクが言っているわけです。


 こうした冷静かつ分析的な眼と、そのための知的基礎体力を持って、取材に励みたいものです。