記者、うつになる

quelo42007-03-13



といっても、去年の夏ころの話なんですが、何だかちょっと仕事のペースをあげすぎたみたいで、ある時すとんと何にもやる気がしなくなってしまいました。私はかなりサイコな方なので、だんだん、これはヤバイ、うつに違いない、どこまで耐えられるか、と自覚的に思っていたんですが、ある日の日曜日、じっとしていたらぼろぼろ涙が出て止まらなくなってしまい、これは行ってしまった!と観念し、職場同僚から、彼が鬱したときの状況を教えてもらい、その通り、産業医産業医の出身病院というコースで、神経科を受診するに至りました。それ以来、パキシル(写真)を服用してます。けっこう効いてます。*1


ここに書いておきたかったのは、専門紙の記者くらいの、比較的軽い職場なのにうつになってしまったか、です。
神経科を受診したときに、心理療法士と、精神科のお医者さんと面談して、それぞれ1時間ずつくらい、ゆっくり話せて、少し整理がついてきました。それからもう一人、やはりサイコ系の宗教関係者の先輩がいて、彼とも話していて似たような状況にいることが分かり、とても整理がついたのでした。


その状況は記者の仕事の特性に関係あるようです。
帰りはそれほど遅くなく、残業時間という意味では前に金融機関にいたときの方が百時間以上の残業、などということはあったのに比べ、毎日帰りは早いんです。ただ、昨年前半は1ヶ月間毎日仕事してたような月もありました。やっぱり、6日働いたら1日休みましょう。
休まなかったのもそうですが、記者の仕事はカウンセラーとよく似ていて、それが一番ストレスになっている、と分かってきたのです。アポとって、1時間話聞いて、職場に戻って文章にして、それを週に何件かこなし、1件1件は次々に忘れ、また次の週はまったく別のことに関わっていく。そういう、積み重ねなく、次々にやっつけでこなしていくのは、精神的にしんどいんですね。
カウンセリングに似てるのは、あくまで相手が表現するものを書き取るので、聴き手はできるだけその中に入らないように注意を払う。ほんとは反論したいような内容があっても、こちらの意見を交換することもなく、また相手に対して深い共感や感動があっても、それについてゆっくり語り合うような関係にもなれず、時間の制約の中で、さっと話を聞いて、さっと帰ってさっと書き写して、また次の記事に向かう。何だか折りが瓶の底にたまっていくようで、これだけ沢山の人と会っているのに、誰とも知り合わないし心が触れあわない。イヌ系の私としては、人恋しいのに会ってて友人になれないのはかえって辛かったかも。ネコ系の人の方がさらっとやれて記者向きなのかもしれません。


さらに、記事に対してあらゆるところから非難され、中には、社の中からも(からこそ?)文句が届き、これじゃまったく後ろから味方に鉄砲で撃たれているようなもの。一方で、市民運動などの人からはこちらはその運動を全面的に助けてくれるものだと過度の期待を受け、もちろん、応援する気持ちがあるから取材するものの、一度載せたらそう簡単に再度載せるわけにもいかず、そうなのよ、どうせ私らはやり逃げなのよ、と偽悪的になってしまう。批判も期待もどちらもストレス、ほんとにストレス。


神経科の先生は言いました。僕らもね、自分が聞くいい話は自分に残して、嫌なことは、ほらこうして窓を開けて、ここから外に出しちゃうんですよ! う〜ん、それは極意! しかし、と〜しろうにそんなに簡単に身につけられる技か?? でもまあ、気分としてはそういうことね、窓から出しちゃうしかないね。というようなやりとりがあったわけです。宗教家の先輩も、いまは無理しない、ときどき休む、ときどき現場を離れて、というような、自分がやっていることを話されたわけです。そうやなぁと思って。


というわけで、去年前半は、月に1回日曜休んだくらい、というときもありましたが、いまはともかく無理せず、あまり遠くにも行かないようにしています。後半は京都1回、広島1回、長崎1回、くらいかな。盛岡から函館に掛けて、転々とするような取材はいまちょっと無理っぽいです。まあ、若いころから記者だったら、こういう生活にも慣れるんでしょうけどね。そういえば、大学生のころ共同通信の斎藤茂男さんに会ったら、いろんな見聞きした面白い話を紹介してくれるんだけど、その人がどう感じているかがぜんぜん伝わってこなくて、変な人だなぁ、と思っていましたが、記者とは斯くありなん!いちいち感じてたらやっていけないから、ああなるのかもしれない、と思い返してもいます。


ぼちぼちやってますので、なが〜い眼で見守ってください。こんな事書きましたが、いまはもうかなり大丈夫です。だから書いてるというか。みなさんも気をつけて欲しいな、と思います。神経科を受診するのは、思ったより抵抗ありましたが、神経科の病気も、神経科こそ、早期発見、早期治療だと思います。

*1:脳の中の信号伝達物質であるドーパミン(養老先生が説明してましたね、あれです)を取り込んでしまうことを阻害する効果があるらしく、それによって脳内のドーパミン濃度を上げることで、信号の通りがよくなる、といった仕組みで、抗うつ効果があるようです。副作用が少なく、けっこうよく効いていると思われます。