朝日と読売と日経が提携する日・・・

quelo42007-10-20



 ちょっとびっくりでした。朝日新聞、読売新聞、日経新聞が共同のニュースサイトを設立するために、提携する、のだそうです。(「朝日・日経・読売が提携 『ネット活用で紙の新聞を維持』」ITMedia 2007年10月01日 18時21分

 朝日新聞社日本経済新聞社読売新聞グループ本社は10月1日、ネット上での共同事業や新聞販売などについて業務提携すると発表した。3社のニュースを横断的に読めるポータルサイトを、来年1月にオープンする計画だ。
 「ネットを活用して紙の新聞を断固、維持していきたい」(朝日新聞の秋山耿太郎社長)――3社の社長は同日、都内でそろって会見。共同でネット対応を進めながら、紙の新聞を守り、発展させていきたいと強調した。


 要は、YahooやGoogleのニュースサイトに集約されてそこに広告を取られているのを黙って指をくわえてみているのではなく、自分たちのポータルをつくって、そこでニュースを読んで(広告をクリックして)もらおう、ということのよう。さらに、記者会見の発言で、「3社は新聞販売事業でも提携した。各社の専売店で他社の新聞も扱える相互乗り入れを、過疎地などを中心に行っていく」とあるように、ネット以外の紙媒体としてのインフラ統合も視野に入っているらしい。
 つまりは、それほど収益が圧迫されてきている、ということだろうし、この3社がそうであれば、まして毎日、産経、さらに地方紙となると、合理化合理化、でしょう。うちだけじゃないのね・・・が第一の感想。


 この件について、cnetで渡辺聡さんが「新聞の役割とビジネスモデル」October 8, 2007 12:07 AM、を書いています。

 紙の新聞のビジネスモデルは一般的に固定費が重い。特に全国紙になると何十ページかのニュースと情報を詰め込んだパッケージを成立させるのに、
 1)印刷
 2)配送ネットワーク(+手配り)
 3)営業ネットワーク(2に同じ)
 4)編集機能
 5)記者ネットワーク
というのがワンセット一式必要になる。
 つまり、全国紙というのを成立されるだけで資本と組織が一定量無いと参入することさえ出来ない。
 昨今の新聞の問題を一言で集約してしまうと、このワンセット一式を賄うだけの収入の確保が段々難しくなってきているというところに尽きる。損益分岐点を切ってしまうと、全国紙という形は維持できなくなる、もしくはある部分において著しい品質低下を起こすことになる。・・・


 新聞の売りは言うまでも無くニュースとなる。コラムや社説、文化面など内容は多様化しているが一次情報の収集整理と再配布の機能が大事にされていることには変わりない。
 一次情報を揃えて裏取りをしていく、という作業はなんらか調査レポートなりまとめなり、それこそ記事執筆に関わった事のある方なら体で理解されてるところかと思うが手間がどうしてもかかる。ほんの一行の記述の正しさを検証するためにあちこち駆けずり回るなんてことは日常茶飯事である。 
 シンプルに理解すると、印刷配布など在庫物流系のコストを除くと、組織面では情報の収集と検証のところが新聞ビジネスの重さの要因と言える。


 雑誌でも新聞でも、どの紙媒体も、有料販売部数の低下と、広告料の低下がそれぞれ自律的に進展し、両者相まって、さらなる低下スパイラルが進んでいるのは例外なし。しかし、取材してニュースを書くことに価値があるとすれば、どうやってそれをお金に換えて、取材活動を維持できるのでしょうねぇ???? これを品よく言えば、「ビジネスモデルの問題」となるわけですね。


 渡辺さんの記事のまとめは、まとまらずに、彷徨していて、こんな感じ。問題は非常に明白だけれども、これまでのところ誰も、少しも、まともな正解に近づけないでいる・・・ような様子です。

 ネットが伸びているからネットにも記事を出せば、というほど簡単ではないのは欧米系の先行事例でも示されている。国内にも同様。コストモデルと収益モデルがアンフィットしていて、且つマージンが薄くなってくるとビジネスモデルを持たせるのは難しい。

 この辺の問題は四半期に一回くらい思い出しては解き方を検討しているが、毎度すっきりしない。
 とはいえ、(このフレーズも過去に書いたような気はするが)良い記事を書いていればなんとかなるというレベルは過ぎているのは間違いないところであろう。
 そして字余りで付け加えると、通販会社がEC化を進めてきた足跡に組織管理や財務管理、ビジネスモデル転換のヒントが幾つかあるように思えている。このあたりは未整理なため、各所ヒアリングをお願いしたりしつつ再考を進めている。
 古い皮袋と新しいワイン。