言い換えでイメージ変えちゃうのは、やっぱり「隠蔽」だなぁ

quelo42008-12-29



 最近の雇用情勢について、辛口コラムがここに(「『ハケン切り』の品格、『派遣切り』(用途:労働問題を真面目に考えたくない際に)」小田嶋 隆、2008年12月24日


 派遣切り、と気楽に言うが、そもそも派遣は切るための雇用制度。派遣などという労働形態を許容していた社会自体が、そもそも問題だった、と強烈に、批判しています。そりゃそうだ、かな。

 いや、私は、派遣労働者が解雇されることを喜んでいるわけではない。彼らをペーパータオル視しているのでもない。
 ただ、切られることがあらかじめわかっている者が切られつつある現今の状況に、しらじらしくもびっくりしてみせているテレビの中の人たちの口吻に、偽善に似たものを感じているわけです。
 そもそも原理的に言って「派遣社員」というのは、「切る」ための社員だ。企業の側からすれば、不況に直面した時にいち早く整理できるからこそ、派遣労働者を雇い入れていたはずなのだ。それゆえ、もし問題があるのだとしたら、それは、「派遣社員を切ること」よりも、「派遣社員という雇用形態を容認しているわれわれの社会」のシステムそのもののうちにある……はずなのだが、こういう時に正論を言ってもしかたがない。


 実は、正論はみんなわかっている。
 でも、どうしようもない。だから、「貸し剥がし」「雇い止め」「派遣切り」「内定切り」……と、新規に作成される不況関連用語には、常に情緒に流れた詠嘆の調子がつきまとうことになっている。みんな大変だね、手を貸してあげることはできないけど、同情してるよ、と。雨に濡れた野良犬に傘をさしかける感じ。でも、連れて帰るわけにはいかないんだ。ごめんよ……ぐらいな。


 メディアの報道ぶりを見ていると、派遣社員を解雇した受け入れ先企業の冷血を責めるテの議論が目立つ。突然過ぎるじゃないか、と。
 でも、本当のところ、現行法からすれば、雇用責任の過半は、派遣先企業にではなくて、派遣労働者として彼らを登録している派遣会社にあるはずだ。
 なのに、派遣会社の責任を追及する論調はほとんど出て来ない。
 不思議だ。


 このあとに、具体的なメディアの偽善をきつ〜く糾弾。そもそも、テレビ局なんて、非正規雇用で成り立っているようなものじゃないか! 正社員はごく一握り、さらにその人たちの平均給与は上場企業の中で上位を独占しているらしい!(1位に輝いた朝日放送(大阪)は平均年収1556.7万円! 2位はTBS、3位はフジ・メディアHDと、ベスト3はテレビ局が独占。日本テレビ放送網も6位に入った。=「テレビ局が上位独占!上場企業「年収」最新ランキング」ZAKZAK 2008/12/18


 そもそも、「フリーター」「ハローワーク」なんて言葉を行政が使ってイメージをよくしようとすること自体、現実の悲惨な状況を隠蔽している、直面して解決しようとしていないことの表れと喝破する。


 我がメディアもこの問題を取り上げていく態勢です。この上のメディア批判はまったく当たっていて、自分はまったく安全なところから、「いやぁ〜、ひどいですねぇ、まったく企業(政府)は、何をやっているんでしょう!」などと糾弾しているだけですむのか? 自分たちの社会的責任はどこにあるんだ? ということになってしまいそうです。