山田昌弘

昨日(12/27、月)の朝日新聞の夕刊に、金子勝が論壇時評で、山田昌弘『希望格差社会』(筑摩書房)について言及していました。例のパラサイトシングルを書いた学芸大社会学の先生です。

努力しても報われなくなる、その絶望感が社会を二極化していく、という話です。単に現在だけの勝ち組、負け組という経済格差だけでなく、将来にわたって更に拡大していき、決して逆転不能な差が付いていくというかなりくらい話です。パラサイトの話もけっこう暗かったですけどね、しかし調査に基づく実証的な話なので、マスコミがセンセーショナルに取り上げる以上に、議論のベースになりうるものだと思います。

これは若年失業者の増大の話にもつながりますし、教育問題で、公教育の衰退と共に、金持ちの子どもだけが高度な教育を受けることが可能となる、という問題とも連動しています。同じ記事で、金子は、苅谷剛彦「教育改革という見果てぬ夢」(アステイオン61号)、城繁幸「『平等』『安定』を捨てた日本型企業の迷走−富士通に見る大企業幻想の崩壊」(中央公論12月号)を同じ流れの中で取り上げ、一方で、この脱落を救う思想的模索として立岩真也小泉義之「生存の争い」(現代思想11月号)をあげています。


難しいですね、こういう「勝つものがもっと勝つ」社会に突き進めば突き進むほど、一般人は、特に中流の人たちの絶望感が募り、ニヒリズムに陥り、現実的な解決がない以上、憂さ晴らしやカタルシスを求めることに走り、逃げ場のないロマンに突き進む。何だか嫌な世の中の年の瀬になってきましたね。