河合隼雄は心のつながりを取り戻せと言うけれど

quelo42005-03-19


今日の朝刊の「私の視点」で、河合隼雄は言っています(朝日、2005年3月19日)。

経済の高度成長を成し遂げてきた日本人が、より幸福になるためには「こころのつながりの回復」が必要である。そのためにはお金で買えないし数値で表すこともできない「友情」ということの価値をしっかりと認識することが大切ではなかろうか。

ここで河合さんが言う「友情」とは「日本式べたべたの関係か赤の他人か、という両極端ではなく、その中間に位置する、豊かで微妙な世界」のことだと述べ、日本人もこれに気づき始めた、と見ている。


さて、そんなに単純なもの? というのが感想。このコラムの書き出しは、「何の関係もない赤ちゃんを殺したり、学校に乱入して殺人を犯したり、小学生の殺人があったり、どうしてそんなことができるのか不思議に思うような殺人事件が起こる。人間の心と心の間のつながりが『切れて』しまっている」です。何だかなぁ、と思ってしまいます。


今さら、河合翁に「解答」してもらおうと思うことがいけないのですが、もう少し現実を精緻に見てもらえればなぁと思います。ちょっと前までは「心がつながっていた」のに、最近では「切れている」のか? ほんとに前は「つながっていた」のか? 全員がつながっていたのか? 黒人や朝鮮半島出身者を理由もなく差別し、ときには殺していた時代はほんの数十年前ではないのか? なんて思ってしまいます。


加えて、人間関係がよりよくなるに越したことはないわけですが、コミュニケーションが稀薄になっている人間関係をどうすれば「つなぐ」ことができるのか? せっかく河合さんが文章書くのなら、何かそういうヒントが一つでも欲しいですよね。偶発的殺人と団塊の世代の不安と若者の人間関係をいっしょくたに論じた上で、「友情を回復しよう!」ってのもなぁ・・・


ちなみに、この右側には猪瀬直樹が、この前とばした人工衛星が何千億円の無駄遣いだったかを、どこにいくら使っているかを順番に示してくれています。この方が説得力あるなぁ。と思いません?