記事課金を始めたThe New York Timesその2


前回の続きで、【渡辺聡・情報化社会の航海図】 ■記事課金を始めたThe New York Times(2)について。

前回、「記事課金を始めたThe New York Times」の若干補足を。ウェブのメディアでコンテンツに課金する動きが出てきているとはいえ、すんなり有料制に移行するケースはまだ少ない。

そう、やっぱり有料制に移行する新聞は少ないわけです。これには

コンテンツの大半はこれまで通りフリーにアクセス出来るようにするが、distinct voice、独自性のあるコンテンツについては課金対象になりうるとの認識を示している。つまり、一般ニュースについては、これまで通り、もしくはRSSの配信を拡張するなどでこれまで以上に目に触れやすくするが、肝になるコラム記事は呼び水とするよりも閉じるべきタイミングに来たことになる。

これ、前回の、コラムとアーカイブが有料になる、ということに対応しています。また、広告についても、

オンライン広告は改善の余地があるとはいえ、そのうち成熟に向かう。手法もパターンも概ね固まり、2桁もしくは3桁の成長を望めないタイミングが来る=それは既に来つつあるために方針の変更を行ったのだとなる。

と、そう簡単にはパイが増えていかないことを強調しています。バブルの時と同じで、行け行けどんどんの時はいいのですが、ひとたびその状況が壊れると、どう対処していいか分からない。新聞のコンテンツをオンラインに無料で載せて、広告料であがりをねらう、というビジネスモデルも壊れてきている、ということです。これはやばい!わけです。

もうひとつ、RSSマーケティングガイドの「ニューヨークタイムズの会長が語る新聞の未来」で会長のArthur O. Sulzbergerのコンテンツの管理方針についてのコメントが紹介されている。

  • 「スタンダードエディター」(スタンダードを管理する編集者?)と言う新しいポジションを確立
  • スタンダードエディターの管理の下、ウェブ上でニュースに関するインタビューの完全な内容やその他の取材情報を、読者(の客観的な判断の参考になるよう)に対して公開する
  • 他のソースからの情報も公開する(個人ジャーナリストのブログなど?)



さらっと書かれているがこのアプローチを明言しているのは面白い。
まず、紙面制約がないことを利用して、コンテンツの公開範囲を広げている。どちらかというと情報をコンパクトにまとめる紙での編集方針からすると真逆のアプローチとなる。


もちろん、ただ公開するのではなく、一定の軸を立てての上でとなる。先日の事件への対策としての狙いは当然あるだろうが、むしろ「信頼度」を再定義しようとしているように見て取れる。外部ソースも公開していくことも合わせると、自らがまとめた記事内容で勝負するスタンスから離れようとしている。

つまり、「紙」というスペースの制約がない分、オンラインではプラスαを行かなければ、コンテンツとしての価値がないというところを言っているのでしょうね。


紙より劣るサイトを公開しているようじゃぁ、まったくもって先は漆黒の暗闇(えっ!どこのことっ??)なわけでありまする。