小倉さんのこと
宅急便の小倉昌男さんが亡くなりました。(ヤマト運輸のお知らせ) 新しいアイデアで流通に風穴を開けていった人、運輸、郵政といった行政による規制の壁に次々に挑戦し続け打ち破っていった人として有名ですが、社会福祉に尽力したことでも有名です。銀座にもある、スワンベーカリーで、障碍のある人と一緒にパンを焼いていた小倉さんを見かけた人も多いでしょう。雲仙普賢岳の噴火の時や、ルワンダ難民支援の時に、全国の宅急便を駆使して、支援物資を集めまくってくれたことも有名な話です。カトリック信者で、亡くなった奥様と一緒に麻布教会に見えていました。
さて、村上龍が JMM7月4日号で、小倉さんのことを書いています。
元ヤマト運輸経営者の小倉昌男氏が亡くなられました。わたしは氏の『経営学』(日経BP社)を読んで感銘を受け、宅配便は今でもクロネコヤマトしか使いませんし、どうしてもお会いしたかったのでNHKの番組(『失われた10年を問う』)にゲスト対談者として出演していただきました。対談の中でわたしが、宅急便は巨大な需要を創出しましたね、と問いかけたところ、小倉氏は、それは違います、と次のように言われました。
「わたしは単に物流の新しいシステムを考え、それを実現しただけです。需要を作り出すのは、お客さまで、わたしではありません」
非常に印象に残る言葉で、今でも忘れることはありません。
蓋し名言!というのは、こういうことをいうのでしょう。この謙遜そのものの生き方が、小倉さんを小倉さんたらしめていたのだと、改めてが〜んと頭をたたかれたような気がします。