笑うムスリム

quelo42006-02-15



JMMのコラムで、アメリカのスタンドアップコメディアンで、ムスリムの人が受けているようです。 <No.361、2006年2月11日発行 ■ 『from 911/USAレポート』第237回「風刺画事件と静かなアメリカ」 ■ 冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)> サイトで見られないのでちょっと長く引用しますが、<写真はそのアズラ>

 面白かったのは、ケーブルのMSNBCで、9日の夜の「カウントダウン」というニュース番組に、「ムスリムアメリカ人のコメディアン」と称するアズラ・ウスマンという不思議な人物を登場させていました。このウスマンという「コメディアン」はヒゲボウボウの「いかにもアラブ人」という格好で出てきたのですが、カメラに写った途端に「バカ笑い」をして見せたのです。
 いつもはポーカーフェイスの番組のキャスター、キース・オルバーマンは一瞬緊張した顔になりましたが、そこでウスマンは「皆さん、ムスリムがバカ笑いしたとこ、見たことがないんじゃありませんか」と言って、もう一度今度は「可愛らしく」笑って見せたのです。その瞬間、オルバーマンは真面目なニュース番組にも関わらず、笑いが止まらなくなり、イスから落ちそうになっていました。
 そのウスマンの笑顔が何とも「ブキミ」な面白さだったこともありますが、「ムスリムのヒゲの男性=笑わない」というステレオタイプを崩す小気味よさがそこにはあり、更に言えば「笑わせてくれるムスリムのキャラクターというのは、何かこれまでのムスリムへの違和感を全部吹っ飛ばしてくれそうだ」という安心感もあったのでしょう。
 このウスマンに言わせると、「西欧が言論の自由を神聖視するのも、ムスリムムハンマドを神聖視するのも同じように馬鹿馬鹿しい」のだそうで、だから「背後にある政治、文化圏の意地の張り合い」を突き放して見るしかない、と至極真っ当なことを言っていました。
「とにかく、今は神聖なるものなんか、何もない時代なんですよ。911のテロリストなんかもそうじゃないですか。だって、アラーの名においてとか何とか言ってるけど、人命の神聖さを無視してかかってるんですからね。連中こそ、ポストモダンの申し子ですよ」というあたりになると、これは思想というよりは単なるレトリックに過ぎないのかもしれません。ですが、この「笑うムスリム」という「キャラ」は、もしかすると人気が出るかもしれません。

ということで、中東を離れたディアスポラムスリムがユーモアを使って、狭隘な精神を乗り越えようとしています。いいですねぇ。


と思っていたら、翌週の今週月曜、なんとJ-Waveジョン・カビラのGood Morning Tokyo にこのAzhar Usman がライブで出て来ました! (インタビューはこちらで1ヶ月聴けます) なんと!このインターネットの時代を馬鹿にしてはいけません。ジョンさんはアメリカにいる弟さんから聞きつけた情報で、電話したらしい。まったく、地球は狭くなってます。Azhar のサイトはこちら。 両親はインド系、アメリカ生まれのムスリムとのこと。このインタビューでも、「だって僕らが住むのは global village じゃない」と言ってのけてます。「お互いがお互いを必要としているんだから、平和を唱えるために働かないと。みんなは、僕みたいのが笑うの見たことないから、そうしたら笑ってくれるのさ。お互い、意外と知らないんだよ」とのこと。
インタビューの最後で、この風刺画事件にも触れ、上の冷泉さんのとこでもあるように、政治・文化圏の意地の張り合い、というところを identity politics と表現しています。ムスリムチームも、西欧ジャーナリストチームも、どっちが偉いか、言い合ってるだけで、相手が傷つくことに思いが至らない、とのことです。


日本でもアメリカでもヨーロッパでも、私たちのすぐとなりにいるムスリムの人たちとどれだけ親しく理解し合えるか、あとはこころのもちよう一つという感じしますね。お互いに少しずつ歩み寄れば、もちょっと仲良くなれる。ムスリム原理主義で暴力的、なんてステレオタイプに思ってる場合じゃないです。