金融機関に就職する為には・・・

quelo42006-03-07


以下、2006年3月6日、JMM [Japan Mail Media]No.365 Monday Edition、の質問、<村上龍=Q:652 金融機関への就職を目指す若者に対して、あるいは再就職を目指す中高年に対して、何かアドバイスをお願いできればと思います。>への、山崎元さん(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)の回答が面白いので少し引用します。

どのくらいお金が好きか訊いてみたい理由は、職業適性として、お金が好きでなければ金融業(証券、銀行、保険、ノンバンクなどを広く含みます)には向いていないからです。お金を稼ぐことは良いことだ、お金を稼げているということは他人の役に立っているということだ、より多く稼ぐことは自分の能力の証明だ、お金を稼ぐためならかなりのことが我慢できる、お金で損をするのは本当に悔しい、……。こうした思いを強く持っている人は、金融の世界で、能力なりに頑張ることができます。


もちろん、人が持っている能力は千差万別で非常に大きな格差がありますが、素直に頑張ることができなければ、その人の能力は十分に発揮されません。私は、これまでに12回転職しているので、結果的に、運用会社、証券、銀行、保険、と様々な金融業態に勤めましたが、勉強したいという「知識欲」、褒められたいという「名誉欲」、自分にも他人にも正しいことをさせたいという「正義感」、などがモチベーションとして強くて、「金銭欲」はそれほどでもない、という人は、金融の世界では、その人の能力に比して成功していないように見てきました。優秀だったはずなのに、金融の世界に行って、案外成功していないという人の多くはこのタイプです。そして、金銭欲の強さには、明らかに大きな個人差があります。

山崎さんは金融に行くには強い金銭欲が必要です!と宣言しています。このあと、「金銭欲には際限がないので、それが行き過ぎないように一線を引く自覚も持っている必要がある」ということも言っています。


まあ、当たり前な話と言えばそうですが、私は金融を辞めてきた身ですので、これを読むと、やっぱり自分には金銭欲がちょっと足りなかったなぁ、と思うわけです。これは、善悪の価値判断からはかなり中立的だと思うんですが、ないものはないんですよね。そこの執着がないとこのマーケットでは生き延びられないかもしれません。
山崎さんは、自分の選択についても振り返っています。

最後に、まだ途中に過ぎませんが(私は今年の5月に48歳になります)、私自身が金融マンとしてどうだったのかを、簡単に総括してみたいと思います。私が金融の世界に入った理由は、外国為替や株式のマーケットが、ゲームとして何とも面白く、その最前線に参加できる仕事がしたいと思ったからですが、振り返ってみて、金融業には向いていなかったように思っています。


最大の理由は、金銭欲が淡白だったことです。もちろん、昔も今もお金は欲しいし、将来のお金については大いに心配しています。しかし、自分のお金を稼ぐということに対しては、十分な集中力・粘着力を発揮することが出来なかったのだと振り返っています。加えて、「たかだかお金のために、嘘はつきたくない」と思う金融業に不向きな倫理的限界の設定や、「本当のこと(出来れば、且つ面白いこと)を伝えて、褒められたい」という幼稚な価値観(感)も金融業には不都合でした。

何となく共感するところもあり、こうした一歩引いたスタンスがあるからこそ、いつも彼のコメントが私にとっては説得力があるのかな、とちょっと納得してみるのでした。