プラトンの洞窟と人を動かす力、の話

quelo42006-07-20



JMMの春さんのエントリーで、プラトンの洞窟の話を、指導者の力量とかけて説明したものがあります(『オランダ・ハーグより』 春 具 第144回、2006年6月23日発行<残念ながら、ネット上にありません>)。ちょっと長めですが、引用すると、

なかに、「プラトンの洞窟」と言われる話をつかってリーダーシップを論じたひとがいて、わたくしにはこれがなかなかおもしろかった。プラトンの「共和国」にでてくる話ですが、人間とは洞窟に捕われた囚人なのであって、生まれてこのかた鎖に繋がれた境遇にいるために、洞窟以外のことを知ることができない。洞窟が彼らの生活のすべてなのである。後方にあるろうそくが彼らの影を目の前の壁に映し出しているが、それがみえるもののすべてである(これがだらけている組織の現状)。


 そんなとき、ひとりの囚人が鎖を壊し、自由になって手探りで洞窟の外まで這い出ていく。洞窟の外に出た彼は、ここではじめて広い世界を見るのです。空は青く、雲が悠々と流れ、鳥は唄い、草木は緑。草原は果てしなく広がって、空気まで甘い。そんな世界をまぶしげに体感したのであります。


 彼は急いで洞窟へ戻り、仲間たちに見てきたことを報告する。微にいり細にわたって外の世界がいかにすばらしいかを説明するのです。当然、囚人たちは「嘘つけ。そんな世界があるわけはないじゃあないか」というネガティブな反応である。だが彼の情熱的な説明にほだされ、囚人たちも鎖をとき、「だまされたと思って」彼に先導されて外界へ出てみる。そして新しい世界を知るのであります。


 プラトンのこの話はもともと「無知」と「知」ということを論じたものでありますが、この話をリーダーシップ論として考察するというのは着眼である。この話の教訓は、(1)リーダーとなる資質のあるものは、未知の世界を見にいく好奇心と勇気を持つ、(2)リーダーは見たり体験した素晴らしいものを独占せず、仲間に伝え、共用しようとする(わたくしはこれを指導者の重要な資質だと思うのです。じぶんで苦労して見つけた新しい世界である。独り占めしていい思いをしたっていいのだからね)、(3)そしてリーダーはそれを知らない仲間たちにきちんと伝え、説得する能力を持つ、という3点であります。

はるさんがこれを解説して、「自分はこの中でも、(3)のコミュニケーション能力が一番大事だと思う」と書いているのですが、そうだなぁと思って。(1)や(2)までは行くんだけど、これを説得させられるように上手く伝えないことにはチームはそっちに向かない。直感と発想力だけでは結果を変えていくとこまで到達できないよなぁ・・・と、納得した話でした。