中国言論事情、2題

quelo42007-04-16



「たまたま」か、「必然」か、中国の言論統制について2つの話題があったので紹介します。


1つはNHK。4月はじめにあったドキュメンタリー「激流中国 ある雑誌編集部 60日の攻防」(2007年4月2日(月) 午後10時〜10時49分、総合テレビ)です。(写真は、その雑誌社の記者

 来年の北京オリンピックに向け、中国政府がこれまでの情報管理のあり方を見直し始めた。建国以来、国家の宣伝機関と位置づけられてきた中国の国内メディアの現場では、何をどこまで報道できるのかをめぐって、様々な議論がわき起こっている。今回、NHKはある雑誌編集部の内部の撮影を許され、2ヶ月にわたってその現場に密着した。時事問題を扱う雑誌では中国有数の発行部数を誇るこの雑誌社は、厳しいテーマにも果敢に切り込む姿勢で、大きな人気を集めている。そこでカメラが捉えたのは、報道内容の線引きをめぐって行われるせめぎ合いだった。
 中国ではタブーとされてきた困難な問題に挑もうとする若手記者や、農村に隠された驚愕の事実を取り上げようとするベテラン記者、報道姿勢を理由に袂を分かった敏腕記者。そして、こうした記者たちを取りまとめる立場の編集責任者。それぞれの葛藤を軸に物語は展開。どこまで報道できるか、を巡り、揺れ動く現場の姿をつぶさに追った。

この写真の記者は、農村に政府によって誘拐された人たちが送られ、そこで教師をしている、という話を取材しようとして妨害される話。その教師にコンタクトしようとするが、結局インタビューは取れず、その雑誌も発行禁止になる、というような話だったと思います。


その記者は元もと別の雑誌で働いていたものの、それが権力にすり寄ったとして退社したもの。しかし残った編集者も、ギリギリのところで政府や政治家らの動きをチェックしつつ、発禁にまで追い込まれないところで自己規制しながらやっていて、「そうしなければ、ニュースを公にできなくなっては意味がない」という路線を行く。どちらの道を行くにせよ、「近代中国」は権力に都合の悪いことは書かせないですむ道がまだ沢山残っているらしく、身の危険を冒しながらでないと取材できない、かなりタフな状況です。ジャーナリズムはここでは鍛えられる、と思いました。


もうひとつ、JMMの中国のふるまいよしこさんからの便り・・・第91回 「公民たちよ、「百花」をめざせ!」(配信日:2007-02-15)ついにネット上でも過去エントリーが読めるように!!!)。


ここでは、中国近代の生活(これには当然文革なども入ってくる)を扱った書物8冊が発禁になる話が書かれています。

 そんな話をその後、ある中国人ジャーナリストにしたら、彼から「『八十年代』も良いけれど、こっちの方がずっとずっと面白いよ。翻訳出版したら?」と、大きなファイル付きのメールが届いた。添付されていたのは、『一個普通中国人的家族史』(ある普通の中国人の家族史)。読んでみると、タイトルどおり、それは清朝末期から現代に至る、ある普通の中国人の家族の歴史がつづられたもので、ここ100年あまりを中国人庶民がたどった歴史を知るには確かに有意義な資料といえる。ただあまりにも淡々としすぎていて、わたし個人には翻訳したい!というほどの意欲は湧かず、逆に彼に翻訳出版する意義はどこにあるのか、と尋ねると、「中国人だったら誰でも経験したこと。それに近いうちにきっと発禁になるからさ」と言った。……発禁になるから、とね?
 ところが、1月下旬になって、実際に彼の予言どおり、『一個普通中国人的家族史』が発禁になったという情報が伝わってきた。それによると、1月11日に開かれた全国図書注文会で「通風会」が開かれ、そこで中国新聞出版総署のウー書林副署長が「2006年出版規則違反図書選」を読み上げ、この本を含めた8冊を「指名して、禁止令を下達し、その後関係出版社および責任編集者が処分され、図書はすべてパルプにされた」と、社会学者・賈西津さんがその声明「わたしの『公民表現』」に書いている。

驚くべきは、『打招呼』(筆者注:お知らせする、という意味)、『通風会』(筆者注:告知会という意味)、『禁止令』という方法で、文書や形に残さず、口頭で、さまざまな著作物が発行禁止になるのは、政府の日常業務であるということ。ご丁寧なことで!!


私の好きなTVタックルで中国を悪く言う一つの口実が、「あそこの国には国の代表者を選ぶ選挙権もない!」というのだけれど、これだけ経済的にも国際社会の中でも大きな存在になって、政府が民間人から批判を受けるのをそれほど恐れる必要があるのか。そろそろ言論・発言の自由を認めてもいいのではないか。


1つ目のドキュメンタリーで、中国政府は依然として、メディアを政府の宣伝機関と考え、昔ながらのメンタリティを切り替えられないでいることが紹介されています。メディアは権力に対して牙をむいてくるもの、というように考えなければ、封建主義者、ファシストのそしりを免れません。・・・と振り返るに、我が業界紙に対しても、そういう風に勘違いしている人、いるなぁ・・・とこそ思へ。