褒め合うことの「見える化」

quelo42007-12-13



 『日経情報ストラテジー』誌の1月号に、いろんな会社が社員同士で褒め合うことを制度として組み入れる工夫をしている例が紹介されています。「インテリジェンスの急成長支える“報奨”制度とは 企業DNAを体現した社員を社員同士が投票し決定 * 2007年12月6日 木曜日 * 杉山 泰一」

 転職支援・人材派遣サービス大手のインテリジェンスは、およそ5年前の2002年9月期は年商234億円だったのが、2006年7月に行った学生援護会の吸収合併などを経て、今期(2008年2月期)は914億円の売上高を見込むまでに急成長している。
 そんな同社の活気ある組織作りを支える大きな柱の1つが、企業理念を実践できた社員を社員同士がお互いに投票し合って選ぶ「DNA賞」であることは人事組織の専門家の間でもあまり知られていない。


 DNA賞は2002年に定めた5つの行動指針のいずれかを部内で一番実践できている社員を選出する。5つの行動指針とは、「社会価値の創造」「顧客志向」「プロフェッショナリズム」「チームプレー」「挑戦と変革」である。
 選出方法で特徴的なのは、同僚の推薦がベースになっていることだ。上司や人事部門の目でなく、現場の目でイントラネットを使って同僚の活躍ぶりを行動指針に絡めて書き推薦文として提出する。
 部内の合意によってDNA賞候補者を選んだら、次はマネジャー会議を開いてさらに候補者を絞り込む。最後は、役員会議で4つの事業ごとに1事業につき1人ずつ受賞者を選ぶ。
 4人の受賞者は、期初の社員総会や事業別下期キックオフ総会の場で、大々的に表彰される。受賞者には、賞金10万円、5万円のほしいもの、ザ・リッツ・カールトン大阪の宿泊券など最高級と呼ばれる顧客サービスを体験できる権利が贈呈される。


 この社員投票の仕組みはこれで終わりではない。同僚から提出された推薦文をプリントアウトし、マネジャーが部下に対して個別面談をする。この面談も、自分と同僚の行動を客観的に振り返る機会の場として意義が大きいという。「同僚から思わぬ褒め言葉をもらうこともあり、モチベーション向上にも大きな効果がある」と伊達マネジャーは補足する。同社では、DNA賞や推薦文を、直接、人事考課点には結びつけてはいない。だが、精神的な“報酬”は非常に大きなものがあるようだ。
 経営側から理念を一方通行で説くのでなく、現場が自発的かつ定期的に企業理念について真剣に考える場を作った同社の手法は、企業理念の浸透に悩む多くの企業にとって参考になる事例だろう。ただし、同社でも最初から社員がもろ手を上げて賛成したわけではなかった。DNA賞の開設当初は「面倒くさい」という声も上がった。だが、回を重ねるごとに「普段は称え合う機会が少ないからいいね」と社員の間に定着していったという。


 これ、どこか忘れましたが、外食産業で、バイトの時給アップ要求を自己申告制にして、働いている者同士で討議して決めていく制度をやっている、そのやり方にも通じると思いました。所詮上司の評価なんて当てにならない、視点といい、土俵といい、どうしても同じ場所から評価できないから。その意味で、同僚からの評価が何らかの形で反映するというのはフェア、と互いに感じる確率が高く、モティベーションアップにつながりやすそうです。


 宗教教団関連でも、こうした方法を制度化して組み込むと、意外に信者サービスが向上するんじゃないかなあ。逆に、宗教者同士は個人営業みたいな性格が強いので、互いに嫉妬や足の引っ張り合いで、ただでさえ尊大なアプローチがさらに助け合わない、貶め合って変なことになっていることが多かったりして?!?!?!?!


 長くなりますが、同じ『日経情報ストラテジー』から、メルマガできていた記事からの引用は以下のような感じ・・・

(ITproメール 2007.12.10「讃え合う仕組みが、社員力を最大限に引き出す」)

 ヘアケア製品「パンテーン」や台所洗剤「ジョイ」、紙おむつ「パンパース」などで知られる消費材世界最大手の米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は2006年、イントラネット上に「パワー・オブ・ユー」というツールを追加した。これは、自部門・他部門に関係なく自分をサポートしてくれた同僚に対し、電子的なサンキューカードを送ることができるアプリケーションだ。マネジャーであれば、このツールを使って目を見張るような活躍をした社員に褒賞付きの電子カードを送ることもできる。


 世界的な化学メーカー大手の米ダウ・ケミカルも2005年に、イントラネット上に讃え合う仕組み「リコグニション@ダウ」を構築した。世界各国に散らばる計4万3000人以上の社員が利用できる。ダウの場合も、自分の仕事を手伝ってくれたり、通常の業務の範囲を超えてがんばっている同僚や部下に対して、電子的なサンキューカードを送ることができる。P&Gの仕組みとは異なり、マネジャーではなく一般社員であっても、褒賞付きカードを送ることも可能だ。褒賞金は、6000円、2万5000円、6万5000円、月給の30%の4段階から選べる。


 讃え合う仕組みは、ITを使わなくても実現できる。2007年3月に開業した外資系の高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン東京では、部門に関係なく同僚の活躍ぶりを目の当たりにした時や、同僚から助けてもらった時に感謝の気持ちを込めて渡す手書きのカード「ファーストクラス・カード」が頻繁に飛び交う。そこには、「最高水準の接客を実現するには、働くスタッフがハッピーであることが何よりも大切である」(リコ・ドゥブランク総支配人)という考えが根底に流れている。


 リッツでのサンキューカードの効果を参考に、日本航空JAL)グループが2006年4月から同様の「サンクスカード」を導入。グループの総社員数は5万人超だが、この1年半の間に35万枚のカードが支給され、その1〜2割が実際に使われた。JALの現場からは「客室乗務員はフライトが不規則なので、他部門に感謝の気持ちをタイムリーに伝えにくい。例えば、サンフランシスコ空港の人に助けてもらっても、次にそこに行くのは3年後かもしれない。そんなとき、このカードが役立つ。悪天候で航空機の到着が遅れたことがあったが、機内清掃スタッフの手伝いをしたらカードをもらい、すごくうれしかった。部門が違っても、みんな仲間なんだと再認識した」といった声が出ている。


 このほかの讃え合う仕組みとして、社員投票で優秀社員を選ぶというやり方もある。地方銀行大手の千葉銀行は2007年に2回、支店や出張所など約170の営業拠点ごとに、顧客や同僚に対して普段から最もすばらしい対応をしている行員をこのやり方で選んで、表彰した。投票後に調査をしたら、「自分よりも若い行員ががんばっている姿を再認識でき、それが刺激になった」という意見が多かったという。


 やっぱり人のやる気を出させるには「仕掛け」が必要です。掛け声だけじゃ人間踊らないって。ね、宗教関係のみなさん。にんじん吊る、ってのともちょっと違うんだなぁ。やったことが認められて、もちょっとやったろ、とそれが持続向上する仕掛け、あったらいいのにな。